藤田 雄　Yu FUJITA
1971年生まれ　奈良県在住

　藤田は遊び心に溢れる着想の持ち主で、数字から連想されるかたちを動物に見立てて、描いていく。例えば、『27のあひるとぞうさん』では、2はアヒル、7は象と、数字のかたちから連想した動物を描く。1はペンギン、3はインコ、6はライオン、8はパンダなど、数字と動物の組み合わせはおおよそ決まっているようだ。背景に規則的に描かれた楕円形は、雲である。時折、太陽が描かれる作品もある。数字という無機質な存在が動物に変化し、一面の空のもとに描かれる様子からは有機的で豊かな世界が感じられる。絵のなかに書かれた「じゃっけんしつ」という文字は、実験室のこと。「じゃっけんしつ」とわざと間違えて書くことで、施設の職員に間違いを訂正してもらうやりとりを楽しんでいるようだ。数字を動物に変えたり、間違えた文字で周囲の反応を確かめるなど、紙面でさまざまな実験を楽しんでいる様子は、実にユーモラス。「じゃっけんしつ」の文字は動物の頭上にあり、文字を囲んだ枠からは、鉛筆で描かれる格子状の細かな線が伸びている。これは、藤田が大好きなバスの運転手の帽子がモチーフとなっている。また、藤田の作品には絵の他に鬼の面などがある。鬼の面も絵と同様に目は星で描かれており、素材や支持体が変わっても独特の世界観は一貫している。