佐々木 早苗 Sanae SASAKI
1963年生まれ 岩手県在住
佐々木の表現は、絵画、織物、刺繍、通信販売のカタログへの描き込みからコラージュ制作に至るまで多岐にわたる。一つの表現に集中しては、数カ月もしくは数年の周期でまた違う表現に移行する。時には以前の表現に戻ることもある。どの制作からも共通して感じるのは、美しい画面構成、緻密さ、制作手法へのこだわり、そして表現へのたまらない欲求と情熱である。25×38㎝の刺繍では、約1年かけて、大小さまざま、色とりどりの四角形を縫った。糸が層となって盛り上がり、俯瞰して見ると、さながら草木や花、畑が広がる色彩豊かな大地を連想させる。描画では、紙面に四角形や丸を絶妙な余白とバランスで描いている。よく見ると、四角形を描いた作品は、細かな格子状の線で形成されている。刺繍、描画には、構成要素である四角形の配置に類似性が見られ、素材は異なったとしても佐々木の制作イメージには連動性があるとわかる。通信販売カタログへの描き込みにおいても、丸や四角などのかたちが頻繁に描かれる。また佐々木独自の文字を書き連ねる制作もあり、かたちへの関心が強いようだ。佐々木は施設や自室で制作しており、時には朝方まで制作が続く。佐々木にとって、制作は心から熱中できる時間のようだ。