アール・ブリュット

岡﨑 莉望 Marino OKAZAKI
1988年生まれ 北海道在住

 岡﨑の描画には、言葉では表現することのできないさまざまな心情が込められている。あらゆる方向から幾重にも絡み合うように描かれた無数の線の太さは、変わることなく均一な美しさを保っている。近づいて見ると、緻密な線の数々は浮遊しているかのような立体感を持ち、線を包み込む空間は果てしなく広がっていくように感じられる。
 以前からイラストや絵画の創作を行っていたという岡﨑が、現在のような線の描画を始めたのは2011年から2012年頃である。ゆっくりと一定の速度で紙の上にペンを走らせ、頭の中にあるという完成図を丁寧に写し取るように線を描いている。
 創作にはカラーペーパーにゲルインクボールペンを使用し、色には強いこだわりがある。頭の中で完成図として見えている紙やペンの色に一番近い色を選ぶために時間を費やすことも多く、線は単色で描くときもあれば、数十色を使用して描くこともある。完成図は描く線の順番や描き進める方向も全て決まっているため、その順番や方向を忠実に再現するために、紙を回転させながら描いていくことが多いそうだ。
 集中するときは1日に10時間以上描き続けることもあり、1点の完成図は40時間から200時間ほどの時間をかけて、繊細な描画が出来上がる。

画像提供・撮影/滋賀県立美術館・表恒匡  撮影/高石 巧

Translate »
error: Content is protected