アール・ブリュット

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小林 一緒 Itsuo KOBAYASHI

1962年生まれ 埼玉県在住

 食べることが好きだった小林は調理師専門学校へ進学し、蕎麦屋で18年間勤めた後、老人ホームや病院などの調理師として7年ほど勤めた。その頃から小林は外食した料理や勤め先のまかないなど、食べた料理名や食材、盛り付け、香り、味の感想などを毎日家に帰ってから思い出してメモすることを習慣としていたという。26歳頃からそれらのメモをもとに、驚くべき記憶力でノートなどに色鉛筆やカラーペンで丁寧に清書して描くようになった。40代半ばに体調を崩して入院し、足が不自由になってからは出前で食べた食事や買ってきてもらった弁当なども描くようになったそうだ。これまでに描いた作品は数千枚にもおよぶという。
 自宅の部屋の一角、小林の創作場所である小さな机の周りには、画材や書籍、作品のほかに食べたものの入れ物、割り箸、調味料、貝殻などが山積みになっている。ラーメン、うどん、丼もの、寿司、弁当など、どんな料理も食べた食材を余すことなく描き残したいという小林は、実際には隠れて見えない食材を絵の中で自由に位置を移動して描いている。全ての食材が見えるように真上から俯瞰した構図で描くのが小林のこだわりだ。どの作品からも、食事への愛情と食べることを心から楽しんでいる様子が感じられる。

画像提供/クシノテラス

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