アール・ブリュット

阿山隆之 Takayuki AYAMA
1973年生まれ 東京都在住

 よく落書きで絵を描いていたという阿山が本格的に作品の制作を始めたのは、20代半ばの頃。仕事でパンフレットのイラストを描いたことがきっかけである。木に描くようになったのは、描いた線や色を失敗しても削って再利用できる利便性と、阿山が通っている木工品の製作を行う工房が、自然と木材が集まってくる環境であったからだという。木材の種類や形状はさまざまで、たんすの一部やドアなどに描かれたユニークな作品もある。
 動物や海の生きものなど、モチーフは写真などを見ながら描くことが多いが、幼い頃に読んだ絵本で印象に残っている物語の場面を思い出して描くこともあるようだ。
 制作方法は、最初にバーニングペンでモチーフの輪郭線を焼きながら描き、線の内側に色鉛筆で丁寧に色を塗り込んでいく。150色もの色鉛筆を使い分け、厚く色を塗り重ねることで、クレヨンのような発色でありながらも複雑で豊かな色彩が生み出される。仕事でとんぼ玉の制作をしている阿山は、ガラスが溶けて混ざり合う色の美しさや面白さを、色鉛筆でも同じように表現しようとしているのかもしれない。
 独自の世界観で色鮮やかに描かれた愛らしい生きものたちは、その美しい色のハーモニーとともに、観るものにさまざまな物語を想像させてくれる。

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