青木 尊 Takeru AOKI
1968年生まれ 福島県在住
濃厚、濃密。青木の描く絵には、そんな表現がよく似合う。作品のモチーフには眼力が特徴的な人物が多く、演歌歌手の「八代亜紀」、悪役プロレスラーの「アブドーラ・ザ・ブッチャー」、アニメキャラクターの「ウララちゃん」と、懐かしい香りが漂う。人物以外には昆虫や大型トラックなども登場する。これらに共通しているのは、青木が愛するものだということ。青木が幼いころ、当時生家は飲食店を営んでいた。夕方から夜にかけての夕食時はお店も混み合い、青木は一人で過ごすことが多かったという。一人の時間、青木の友は、河原の昆虫やテレビから流れてくる歌謡曲、アニメ、プロレスだった。年月を経た今でも作品に登場するものの多くは、幼心に残る数々のイメージである。画材には身近に手に入る色鉛筆やボールペン、水性ペン、クレヨンなどが多い。執拗に、力強く描き込まれた作品からは、モチーフに向けた青木の熱い思いが溢れだしている。
執筆/はじまりの美術館 館長 岡部兼芳