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平野 智之 Tomoyuki HIRANO
1987年生まれ/東京都在住
平野の作品は、17枚の物語で構成されている。作品には平野が通っている施設の職員や仲間たちが登場し、中でも主人公としてよく描かれるのは施設の元職員の「美保さん」だ。「美保さんシリーズ」は2009年から描くようになった。
美保さんが旅をする物語の舞台は、平野が過去に訪れた場所や好きな童話や映画などである。美保さんの衣装は童話やディズニー映画に出てくるお姫様などを参考に、物語に合わせて描かれている。白いシャツに青いスカートは、東海道新幹線がモチーフだという。また、平野は靴を「土足」と呼び、足元をクローズアップした場面を多く描く特徴がある。土足にはさまざまな形があり、時々土足が乗り物に変身するユニークな展開も見どころの1つだ。
絵は自宅で制作し、紙に鉛筆と色鉛筆で描いてから好きな構図に切り取っている。施設では絵を組み合わせて物語をつくり、1枚ずつ字幕となる言葉を考えてパソコンに打ち込んでいるそうだ。映画のイメージで制作していると語る平野は、場面ごとにA4サイズの黒い台紙に絵を貼り、台紙の上の余白に印刷した字幕を貼って作品を仕上げている。一度完成した作品でも、別の物語で使いたいと思う場面があれば、抜き取って違う物語につくり上げることもあるそうだ。
画像提供/クラフト工房 La Mano