アール・ブリュット

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似里 力 Chikara NISATO
1968年生まれ 岩手県在住

 似里が毎日夢中で創作しているのは、「糸を切って結ぶ」を繰り返して繋げた糸を玉状に巻いた「糸っこ」である。無数の糸の結び目がハリネズミのように飛び出した直径7㎝ほどのふんわりとした糸玉は、小さな生き物のようにも見える。
 創作のきっかけは施設の草木染糸の製作である。販売用の糸を玉状に巻き取る仕事をしていた似里は、糸が絡まったときに一度糸を切って再び結び直すというが作業が気に入り、次第に糸が絡んでいなくても人目を盗んでこっそりと糸を切って結び直すという行為を始めたそうだ。売り物であるため糸を切るたびに職員が注意していたそうだが、何度注意されても似里は諦めず、やがて自由に糸を扱えるようになった。以降、思いのままに「糸を切って結ぶ」を繰り返すようになり、現在のような不思議な糸の造形が生まれたそうだ。
 施設のアトリエでは似里の創作専用の机が設けられ、平日は毎日数時間、糸を切って結んでいる。最初に木綿糸を10㎝ほどの長さで切り揃え、一本ずつ手で結んでいく。糸の結び目と結び目の間をさらに切ってまた結び直す作業を何度も繰り返しながら、約1ヵ月かけて1㎝程度の細やかな間隔で結び目が連なる「糸っこ」が完成する。

画像提供/るんびにい美術館

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