渡邊 義紘 Yoshihiro WATANABE
1989年生まれ 熊本県在住
「折り葉R」と名付けられたこれらの作品の発想と制作は、類を見ない。伝統文化の「折り紙」と葉っぱというごく身近な素材を使い、誰もが想像しなかった新たな創造をして見せたのである。
毎年クヌギの葉が落葉する11月頃、渡邊はその葉を拾い、さまざまな動物を立体的に折り出す。逡巡する様子もなく、1体15分程で、2~3㎝くらいの動物をつくる。時折、「はぁぁぁ」と息を吹きかけ、葉を湿らせながら折り進める。落ち葉は脆く壊れやすい印象だが、クヌギの葉で折り上げた作品は、わりと丈夫である。ただし、湿気を含むと形が崩れるという。保管されているもっとも古い作品は、18年前のもの。渡邊は中学1年生の秋にクヌギの葉と出合った。初めて折った作品は朽ちることなく、今もその姿を留めている。
渡邊は幼い頃から、公園で昆虫を追いかけたり、動物園や水族館に行くなど、あらゆる生物に興味を持っていた。10歳頃からは、切り絵や陶芸など多岐にわたり制作してきた。切り絵では、一切下絵のない紙にハサミを入れ、生き物の輪郭や毛並み、筋肉などの質感を糸のような細さで繊細に切り抜く。驚くべきことに、完成した作品は切り離されることなく1枚の紙のまま繋がっている。素材の特徴を熟知すること、自身の創造性を表現する手先の器用さを備えていることによって、渡邊の作品は生まれている。