アール・ブリュット

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藤岡 祐機  Yuki FUJIOKA

1993年生まれ 熊本県在住

 藤岡は広告や展覧会のチラシなどの紙を使い、1㎜にも満たない間隔で鯨のひげのように紙を切っていく。リズミカルに手際よく1本1本を確実に。神業とも言うべき、正確無比な作業である。紙が途中で切れてしまうことはない。紙を切る細さに驚かされるが、ハサミに角度をつけ、紙にスパイラル状のクルクルとした動きが出るように切る技術にも目をみはるものがある。その動作によって、紙は表面と裏面とが双方に絡み合い、より立体的で躍動感のある作品が生まれる。片面(または両面)に色を施すのは、表面と裏面の色がスパイラル状に絡み合う美しさを楽しみたいからのようだ。最後は、必ず斜めに切り込みを入れて完了する。それが意味するところはわからないが、両親によると作品が完成した印、または落款やサインの代わりではないかということだ。幼少期からハサミで紙を切ることが好きで、抽象的なかたちの切り絵をつくっては家のいたるところに置いていたという。現在のような制作が始まったのは12歳頃で、紙を切る幅が少しずつ細くなっていった。藤岡が何をつくっているか、答えを求めることはナンセンスで、創造の源泉とすら言えるような、次々と生み出される類を見ない新たな造形は、純粋に心を惹き付ける。

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