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柴田 鋭一 Eiichi SHIBATA
1970年生まれ 埼玉県在住
柴田の創作はオセロゲームと共にある。日中の大半は「せっけんのせ」と呼ばれる作品の制作とオセロに費やされる。オセロと言っても誰かと対戦するわけではない。オセロの駒を並べながら盤に当てる音を楽しみ、合間に言葉遊びをしながらボールペンを画面へと走らせる。色とりどりの柔らかな線や点、時に黒一色で描かれる力強く鋭い線が泡のように無数に重なり、画面を覆い尽くす。
柴田が絵を描きはじめたのは1994年頃。それまでは施設でウエスを切る作業などを行っていたが、この頃から施設の職員が利用者のひとり一人の力が発揮できる仕事を模索する中で、表現活動を彼らの仕事の一つとして位置づけた。
当初は数字の2と3ばかりを描いていたが、彼の母親から数字の2と3の他に平仮名の「せ」が好きだという話を聞いた施設の職員が、柴田に「せ」を描くようにお願いしたことが「せっけんのせ」の制作のはじまりである。以来20年以上描き続けている「せっけんのせ」は、年月を重ねるごとに複雑な形態へと変化している。初期は紙にクレヨンやマーカーで描いていたが、現在はキャンバスにボールペンを使用し、F0サイズからF25サイズで制作している。作品は数百点におよび、海外でも高い評価を受けている。