アール・ブリュット

辻 勇二 Yuji TSUJI
1977年生まれ 愛知県在住

 鳥の目を持つかのように、美しいモノクロームの俯瞰図を描く。辻は、建物などの高所から街並みや風景を眺めることが好きで、誰かに止められることがなければ、いつまでもいつまでも眺め続けている。その際に何かを描き留めることはなく、眼でスキャンをかけていくように街の表層を頭の中に記憶していく。四方を隈なく眺めていくが、好きな日本家屋の瓦屋根は、とりわけじっくりと眺めているそうだ。
 創作は中学2、3年生の頃から始まった。記憶した実在の街、それに自分の空想を交え、実在と空想が混じりあった架空の街を紙面に描いていく。辻の創作は現実と想像を合わせながら、ここではない別世界にある新しい街を再創造しているようでもある。また、作品に人らしきものが現れないことも特徴の一つである。だからといって、ゴーストタウンのようなもの寂しさはない。車や船の往来が人の気配を漂わせ、街の喧騒が聴こえてくるかのようである。手書きの質感からは、太陽の陽ざしの温もりが感じられる。

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